ごはんぐるり
ごはんぐるり
西加奈子 著
文春文庫 560円+税
☆☆☆☆
著者、西加奈子さんの「ごはん(食事)」に関する33のエピソードを集めたエッセイ。巻末には、「奴」という食べるとは何かを考えさせられる短編小説、そして文庫版特別対談も収録されている。
キラキラしていない、きっちりもしていない、もちろん洗練もされていないごはんに関するエピソードに、読んでいて、ほっとした。そして、うんうんと頷いたり、ほぉっと息を吐いたり、わぁっと目を輝かせたりしながらあっという間に読んでしまった。まだまだ読んでいたかった。まだまだ西さんの目を、舌を、文章を通して「ごはん」を読んでいたかったと思った。
ガサッとしたあたたかさを感じ、読んでいて落ち着くエッセイ。
こだわりがなく、でもこだわりがあって、食べることが好きな人に、是非読んでほしい。
天才はあきらめた
天才はあきらめた
山里亮太 著
朝日文庫 620円+税
☆☆☆
山ちゃんがお笑いにストイックだということは、いつかのテレビ番組で見たことがあったけれど、この本を読んで、ここまでストイックだったのか!!と驚いた
山ちゃんのテレビ番組での他者のコメントへのツッコミ方、切り返し方。そのワードチョイスのセンス、素晴らしさはみなさんご存知の通りである。才能だなぁ〜!!と思わずにはいられない。
私はその才能ゆえに、山ちゃんはスルッと今の芸能界でのポジションや仕事を獲得できた人なのだと思っていた。
しかし!この本を読むと、
「山ちゃんって、こんな不遇の時代があったの!?」
「山ちゃんって、こんなに思い悩んでた時期があったの!?」
と、山ちゃんの数々の苦労や努力を知ることになる。
山ちゃんは本書の中で、自分には才能がないから努力するしかなかったという主旨のことを最初から最後まで書き続けているが、いや、違う!!!そうじゃない!!と私は思う。
山ちゃんは才能がある。やはり、よく言われるように、才能とは努力できる能力なんだ!!!
また、この山ちゃんの数々の努力の跡が記されている本を読んでいると、自分がいかに自分に甘いのか、いかに自分に言い訳をしているのか痛感させられる羽目になる。
山ちゃんいわく、
「自分って駄目なんだなぁ……」という無駄な悩みの時間を短くすることが大事らしい。そのために、普段から自信貯金を貯めておいて、くよくよしてしまいそうな時に使うらしい。
なるほど!!
このような、山ちゃん流 努力するためのノウハウがこの本には他にもたくさん記されている。
意図しているのかしていないのか、この本は自叙伝かと思いきや、読み方によってはビジネス書・自己啓発本にもなり得るポテンシャルをもっているのである。
最後に。
この本の解説は、オードリーの若林正恭さんが書いている。私はこの解説の中の
あの実力があって慕われていないとなると、よっぽど人望がないのだろう
という一文が好きすぎる。オードリーのネタをYouTubeで見返そうと思った。
行かずに死ねるか!
行かずに死ねるか! 世界9万5000km自転車ひとり旅
石田ゆうすけ 著
幻冬舎文庫 600円+税
☆☆☆☆
著者、石田ゆうすけさんの、7年半に渡る自転車世界一周の旅を記した紀行エッセイ。
このエッセイの前半に
「そう、あれこれ考えていてもしかたがないのだ。とにかく動くことだ。動きだせば、自然に力がわいてくる。」
という文が出てくる。
びっくりした。
この前読んだ、「ガンジス河でバタフライ」でたかのてるこさんが言ってたことと、すっごく似てない!?
やっぱりこの石田さんの考えにも共感。私も動かなければ。
また、著者は旅の中で、景色に圧倒され、何日も魅入ってしまうという経験をする。
そんなこと今までの私の人生にあっただろうか。「何日も」は時間の都合上無理だとしても、何分も何時間も何かに魅入るなんてこと、あっただろうか。
…なんて素敵な経験なんだろう。想像しただけでゾクゾクする。
旅を続ける中で出会い、交流を深める友人たちとのエピソードも、あたたかい。
私は、友人としょーもないことを真剣にするという楽しさを、社会人になってからはすっかり忘れていた気がする。
小学生のころ庭に地下基地を作ろうと、幼馴染みと何日も日が暮れるまでシャベルで穴を掘り続けたあの日
中学生のころ、友人たちと家から材料を持ち寄って教室のストーブで餅を焼き、先生にキツく叱られたあの日
高校生の頃はあんまりしょーもないことしなかったなぁ。大学生のときのことはありすぎて書ききれぬ…
(以上、私のしょーもない回想でした)
全て過去のことだと思っていた。今だって、やろうと思えば友人と楽しいことはいくらでもできるのだ。
著者は、旅の中で友人たちと実に楽しそうに自転車をこぎ、飲み、語り、歌い、踊る。そこには私が忘れてしまった時間がある気がする。
旅を続けるうちに変容し、深まっていく著者の人生観にも惹きつけられる。そして同時に、圧倒される。
忙しく毎日働いていると、何のために生きているのか分からなくなることが、誰にだってあると思う。そもそも、生きているということや人生について考えることすらなくなってしまうこともある。
そんな中で、著者の人生観は、日常を彷徨っている私たちの灯台になると思う。
(もっとも、著者は、旅を長く続けていると、旅をすることが日常になってしまい、何をやっているのか分からなくなることがあるというのだから、それも興味深い。なんという逆転現象。)
著者の旅を通して自分の人生を見つめ直すことができる本だと思う。現代社会ですり減っている人。すり減っているつもりはなくてもなんとなく毎日が過ぎて行く人に是非読んでほしい。
アヘン王国潜入記
アヘン王国潜入記
高野秀行 著
集英社文庫 670円+税
☆☆☆
アヘンを栽培しているミャンマー北部、ワ州の村に、著者、高野さんが潜入取材したときのことを書いた本書。私は「移民の宴」を読んで、高野さんの虜になり、この本を手に取った。
が、しかし。「移民の宴」に比べて(内容的にしかたがないのだけれど)、この本は世界史やら地理やら国際状況やらなんやらと私の苦手な部分が多く、難しかった。
それでも、興味深いルポであるのに違いはない。というより、読み進めていけばいくほど、「なんか思ってたのと違う!!」と感じるようになる。
思ってたよりも村から犯罪臭がしない!
高野さんアヘン中毒になってるけど、いいのかこれ!?
正直、国や軍や歴史といったことは私にはよく分からない。けれども、読み終わると、「どこに住む人でもみんな同じ人間なんだな」と至極当たり前のことを思った。そのことに気づけただけでも、本書を手に取ってよかったと思う。
移民の宴
移民の宴 日本に移り住んだ外国人の不思議な食生活
高野秀行 著
講談社文庫 800円+税
☆☆☆☆
日本に移り住んだ外国人の食生活を取材しまとめた一冊。タイ人に始まり、イラン人、フランス人、沖縄系ブラジル人、朝鮮族中国人などなど様々な国や文化圏から日本にやって来た人々の食卓に著者が潜入し調査している。
言い回しや言葉が少ーし堅いところもあるが、比較的簡潔、そしてユーモラスで読みやすい文章。外国の文化に興味のある人なら尚更のこと読むべき!面白くてスルスル読めるはず。
この本を読むと、自分の日本に住む外国人への無知っぷりに呆れた。知らないことがたくさんありすぎて、この本を読んで、知ることができて本当に良かったと思ったことがいくつもあった。
◯沖縄系ブラジル人や、朝鮮族中国人という人たちの存在
◯こんなにたくさんの、外国人がいるということ
◯しかもこんなに多種多様な外国人のコミュニティが日本に存在するということ
などなど…
そして、何より驚いたのが、「多くの外国人にとって、"日本食は(作るのが)簡単"」ということ!!これには、著者も驚いたという。
読めば、暖かい気持ちになり、日本に住む外国人と今までよりもコミュニケーションをとりたくなる。外国人の目を通して、日本を見つめ直すこともできる。そして読み終わったときに、まだまだいろんな国や文化圏の人の食卓を覗いていたかったなぁ…と思う。そんな一冊。
ガンジス河でバタフライ
ガンジス河でバタフライ
たかのてるこ 著
幻冬舎文庫 648円+税
☆☆☆☆☆
著者、たかのてるこさんの初めての1人海外旅行(香港・シンガポール・マレーシア)と、その半年後に行ったインド旅行の2つの旅の紀行エッセイ。
おもしろくてスラスラ読めて、そして魅力的!とにかく魅力的!!私は仕事中もこの本のことが頭を離れず、早く続きを読みたかったほど。そして、著者の言葉を借りるなら、いい意味で「"若気の至り"爆発」!!読むと元気になれる一冊。
この本の中で心に残りすぎている文章がある。
あぁ、なんか「動く」のってスゴイ!この旅に出たことも、こうやってバスに揺られていることも、すべては私が動いたことから始まったんだ。(中略)心を動かす、体を動かす、なんでもいい。とにかくいつも、動いていることが大事なんだ。
感動!共感!共鳴!!もう、まさに心を動かされた!!なんてステキな考え方なんだろう。
かと思えば、やっぱり著者が破茶滅茶すぎて、凄すぎて、私の価値観や人生観をバシバシ打ち破ってくる。この本を読んでいると、頷いたり、びっくりしたり忙しかった。
兎にも角にも、旅に出たくなる一冊。そして、著者のような旅、そして生き方をマネしたい!でもマネできない!と思うような一冊。
はじめまして
はじめまして、Bゆうかです。
このブログは、関西在住、20代の私が気の向くままに書きたいことを書いていくブログです。
よろしくお願いします。